リンパ浮腫のための医療リンパドレナージ
私たちの体は約60兆個の細胞でできていますが、細胞が生きていくためには酸素と栄養素が必要です。それを全身の細胞に送り届けているのが血液です。心臓から送り出された血液はどんどん細くなって毛細血管になり、そこから栄養と酸素が染み出して細胞に届けられます。毛細血管が細胞に直接くっついているのではなく、毛細血管と細胞は少し離れていて、スキマがあります。毛細血管の血液はそのスキマに「少し多めに酸素と栄養を置いていきますね。」といって心臓に戻っていきます。細胞は「ありがとう、これだけもらいますね。」といって必要な分だけを受け取り、その代わりに二酸化炭素や老廃物などの不要なものをスキマに置きます。この物質交換が終わるとスキマは二酸化炭素や老廃物を含んだ水でいっぱいになります。その水は静脈から心臓に戻り、さらに肺に運ばれて二酸化炭素は呼気と共に体の外に出されます。ところが毛細血管が回収しきれない大きな分子の不要物があって、その10%程度を回収するのがリンパ管です。スキマの水はリンパ管に入った時からリンパ液という名前になります。リンパ液はリンパ管のみちすじを流れていって、最終的に鎖骨の奥のところで血液の中に戻されます。これで余分な水の回収は終わります。ところが、手術などでリンパ管のみちすじに何かの問題がおこり、静脈が運んだ後の残りの水を回収しきれない場合があります。特に下肢の場合、重力に逆らって上にうまく送れずに、その成分が細胞のまわりに徐々にたまっていく事があります。これをリンパ浮腫といいます。このたまってしまった不要な物質がリンパ液として何とか流れてくれるように特別のマッサージをするのが「リンパ浮腫のための医療リンパドレナージ」です。オイルや機械は一切用いず、手技のみで行います。
手術に伴いリンパ節郭清をした患者様に大切なこと
- リンパ浮腫にならないために注意すること。
- リンパ浮腫になりかけた時、早い段階で対処すること。
- たとえリンパ浮腫になったとしても、リンパ浮腫と共に楽しく人生を生きること。
リンパ浮腫には日常の管理、つまりご自身の身体と向き合うことが最も大切な治療です。
それは一生を通じて自分の身体を守るという責任を果たすことなのです。
そして、自己管理は一人ではなくプロのサポートを得ながら、ゆったりとした気持ちで行うことが大切です。細胞の一つ一つがご自身の感情とつながっていることを想像してみてください。セルフ管理を目標におき、定期的なサポートを受けるスタイルが理想的です。
リンパ浮腫治療のための弾性着衣・包帯法
リンパ浮腫が進行すると腕や手足のぷっくりするだけでなく、かたくなったり皮膚が伸びにくくなったりする場合もあります。そんな時にはリンパ浮腫のための弾性スリーブ、弾性ストッキングで圧迫します。その購入はリンパ節郭清を伴うがんの手術をされた患者様には医師の指示書により保険適応となります.ドラッグ・ストアなどで販売しているものではなく、セラピストが計測・選定したものを購入して下さい。リンパ浮腫の進行度によっては弾性包帯を用いる場合もあります。
初めての患者様へ
初めての患者様は安全に複合的理学療法を受けて頂くために、可能であれば以下のフォームを印刷して主治医の先生に記入していただいてください。
- ※ 術後の経過年数などにより、主治医の先生にご記入いただくのが難しい場合はご自身の記録をお持ちください。